いい暮らしってどんな暮らし?
ずいぶん前に雑誌か何かで読んだ記事に、どこかは忘れたけど、たしかオーストラリアのビクトリア州だった気がする。とても素敵な話しが紹介されていたので、シェアしたいなと思います。
海沿いの小さな街に古いサーフボードファクトリーがある。ファクトリーというより、古い小さな小屋といった方が正しいかもしれない。
そこでシェイパー(サーフボードを創る人)として生計を立てる20代の若いサーファーがいる。
彼がシェイプするボードは全行程が手で行われる、ハンドシェイプと呼ばれる、昔ながらの制作方法。一本のサーフボードが完成するのに、とにかく手間と時間がかかる。
テクノロジーの進化で今はコンピューターに数値を入力してマシンで作るのが主流になりつつあり、大量生産が可能になった。
でも彼はサーフボードはアートであり、一人一人のスタイルに合ったものを手だけで「創る」ことにこだわっている。宣伝などはほとんどしない。それでもローカルだけではなくオーストラリア国内でも注目されている。
そんな彼に目をつけた大手サーフメーカー数社が彼のボードをブランド化して利益を上げようと、こうオファーしたそうだ。
君はまだ若い、もっと都会に出て大きなビジネスをするべきだ。そうすればもっと儲かっていい暮らしができる
そんなオファーに対する彼の答えは
僕は祖父が残してくれたこの小屋で、大好きなサーフボードづくりをしながら、仲間たちとこの土地の美しい海でサーフィンできる生活が気に入っている。これ以上いい暮らしがあるかい?
そう答えたそうだ。
有名な漁師の物語に似ているがコレは実話だそうです。
20代といえば野心のかたまりであるのはごく普通。それでも彼は彼の人生で何が必要で、何が大切かを知っている。素晴らしいバランス感覚と人生観を持った若者だと思います。
同時に彼はサーフボードを大量生産することが環境破壊に繋がることを懸念している。心から愛することができる環境(フィールド)を破壊されることは誰にとっても堪えられない。僕たちサーファーにとって海は汚されたり埋められたりされてはいけない場所。
生きた海には絶対に生きた山と川が必要、川から流れる砂が地形を作り波をつくる。だから自然が本来のシステムで機能しないないといけない。
ビジネスでは利益を出すことのプライオリティは高い。でも大量生産、大量廃棄、環境破壊、不当労働、そんなビジネスはもう成り立っていかない時代だと思う。そして、そうあってほしい。
僕は死んだあと、また地球に生まれ変わってサーファーになるつもりだ。だからその時、地球が今よりもっと美しい場所であってほしいと思っている。